昭和の時代のラジカセにSTEREO WIDEなるスイッチが付いている機種がありました。
このスイッチをONにすると小さなラジカセのスピーカーが大きく左右に広がったように聞こえました。
この装置のしくみはとてもシンプルです。
下の回路図に示す通りステレオの左右のチャンネルをそれぞれ逆位相にして反対側に足しているだけです。
こうする事でホールなどで発生する反射による反響を模擬している事になり
脳の錯覚により音が広がって聞こえるというわけです。
この回路では可変ゲインアンプを使用しています。このデバイスを使う事で反響音の強弱を可変する事ができ、
ConsoleのVolumeでリアルタイムに変化を確認できます。
ちなみに最大に効かせると逆位相同士の加算によって中位の音がキャンセルされます。
音楽ソースでは多くの場合中位の音であるボーカルが消えてしまいます。
ステレオワイドは簡単な構造で大きな効果が得られるため、信号処理の動作確認に最適です。
メニューバーの「Instrument」→「Console」で上のコンソール画面が開きます。
回路では可変ゲインアンプの1が指定されているため、このVOL1がそれに該当します。
ここでは-1と負の値が設定されているため、このアンプは反転アンプとなります。
一番上の「Source」の「Soundcard」を「File」に変えると信号ソースに音楽ソースが選べます。
CDなどから複製したm4aファイルが再生可能です。
MacBookなどの小型の再生装置ではステレオワイドの効果は絶大です。
これに慣れると普通の再生音では物足りなく感じるかもしれません。
更にフィルタを追加したりしてカスタマイズすると面白いでしょう。
注意点としては加算する前にFIRフィルタを使うとステレオワイドの効果がなくなります。
理由はFIRフィルタの大きな遅延時間によるものです。
FIRフィルタは位相遅延特性が周波数で一定なのですが、遅延時間そのものが大きいため
ステレオワイドで必要な位相差180度が維持できなくなります。
遅延時間の小さなIIRフィルタがここでは効果的です。RWSではLPF、HPFがそれぞれ
2次のIIRフィルタとなっています。(BPFは4次)