周波数特性を測定する

オーディオ回路などの周波数特性を測定する回路を作ってみます。 ネットワークアナライザのように振幅特性だけではなくて位相特性も測定できるようにします。 MacBookではサンプリング周波数が96kHzまで対応しているため最大測定周波数は48kHzですが、 市販のUSBオーディオインターフェイスを使えば最大192kHzサンプリング、 周波数特性は理論上96kHzまで伸ばす事ができます。

位相まで含めた周波数特性の測定というと簡単ではない印象がありますが、 IQ復調回路を使う事で比較的簡単に実現できます。 IQ復調回路は位相を測定する様々な分野で応用可能です。

測定環境の準備

周波数特性の測定なので可能な限り広い周波数をカバーしたいものです。 そのためにはUSB接続によるオーディオインターフェイスを使用するのが簡単です。 RWSでは最大サンプリング周波数192kHzまで対応しているので 市販のオーディオインターフェイスでMac対応で192kHzに対応していれば使用できます。

ただし注意する点として、入出力回路の周波数特性があります。 サンプリング周波数がハイレゾ対応で192kHzとなっていても 内部のアナログ回路の周波数特性が20Hz〜20kHzという機器が見られます。

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こういった問題を満足する製品としてTASCAMのUS−366があります。 実際に周波数特性をこちらで実測して10Hz〜80kHzまではほぼフラットであることを確認しています。




USBオーディオインターフェイスをMacに接続したら「Launchpad」→「その他」で 上のような画面になり一番下の「AudioMIDI設定」を選択します。




接続したデバイス名を選んで「フォーマット」から192000Hzを選んでください。 これでRWSから192kHzサンプリングで入出力できるようになります。

周波数特性測定回路





この回路はIQ復調器そのものです。 TGはそれぞれ90°の位相差になっていて、TG1とTG2のように番号が異なると90°位相差になるよう設定されます。 ここでは使用されませんがTG3は更に90°の位相差が付いてTG1とは180°差となります。 このように90°位相差の信号源2個と乗算器2個、出力のLPFで構成されたものがIQ復調器になります。

測定周波数範囲は10Hz〜96kHzで固定です。
TG1 step=50 は上の周波数範囲を50分割でスイープします。
周波数のステップ幅は指数的に増加するためLOG軸上は等間隔になります。
TG2の出力をLch Outputから外部に出力しLch Inputで外部から信号を入力します。
フィルタ後の信号は Ave value1 でバッファサイズ内で平均され内部レジスタvalue1に格納されます。

右下の Fresp は周波数特性を測定するという定義文です。 wait時間ごとに測定値を表示し、TGの周波数を1ステップ進めます。 測定値の計算は以下の通りです。

振幅特性  mag=20log√(value1^2 + value2^2)
位相特性  pha=180/π ATan(value2 / value1)

wait時間はLPFの収束時間から計算します。
t=1/7Hz=0.14sec より少しでも長い時間を設定すべきです。
ただしLPFはIIRフィルタなので回路例より大きな比帯域では不安定になります。
もっと高い周波数から測定するのであれば、スイープを高速化できるでしょう。

このようにTGは単独ではスイープできないのでFresp定義文と必ずセットになります。

CAL(キャリブレーション)





周波数特性を測定するためにはCALが必要になります。 CALするためには入出力間をケーブルでショートして周波数特性を測定します。




測定した周波数特性です。 これはそのままオーディオインターフェイスの周波数特性を表しています。 直線的なのが振幅特性でギザギザしているのが位相特性になります。 周波数ステップが50ステップと荒いため位相特性は無秩序に見えます。




CALスイッチを押すとケーブルなどの測定系の周波数特性がキャンセルされます。 上の輝線が振幅特性で下の輝線が振幅特性になります。 振幅は10dB/div、位相は45°/divで固定です。 これで測定の準備が完了しました。

測定





被測定物をケーブルに接続します。




測定した周波数特性です。 カットオフが2kHzあたりの1次フィルタ特性であることがわかります。 この例では挿入損失が5dBほどあります。

サンプル回路のダウンロード