AM変復調の実験
AMラジオの原理を勉強するため、AMの変調から復調までをRWSだけで実現させます。
AMラジオは中波帯の1MHz前後の周波数になるためサウンドカードでは扱えません。
そこでMac内臓スピーカーやマイクの周波数範囲の上限である15kHzを使って実験してみます。
つまり電波ではなくて音声信号で変調の実験をやってみます。
この実験では特別な外付けUSBオーディオデバイスは必要ありません。
Mac内臓のマイクとスピーカーを使うのでMacだけを準備してください。
送信回路
先ずは搬送波の周波数を決めなくてはなりません。
ここでの搬送波は電波の代わりなので聞こえない周波数が良いのですが、
スピーカーとマイクの周波数特性の制限もあるため15kHzとしました。
15kHzは聞こえる人にはしっかり聞こえてしまいますが、そこは我慢してください。
AMの送信回路はシンプルです。
搬送波の振幅を変調信号によって変えているだけです。
ここでは変調信号は1kHzのサイン波としています。
搬送波と変調信号で2つのSin信号源を使っていますが、
ここに付いている番号「Sin1」と「Sin2」はとても重要です。
この数字の違いで独立した別の信号源として扱われ、位相の連続性を保証しています。
これについての詳しい解説は別途記述します。
Sin信号源から出力された1kHzは平均値が0の信号なのでDCレベルを加えてオフセットを付けます。
この信号を乗算器で搬送波とミキシングする事でAM変調波が得られます。
DCレベルを加えずに乗算するとAMではなくてDSB変調となり、復調回路がAMよりも複雑になります。
これについては別途記述します。
乗算器の出力をオシロのch1につなぎ、同時にLchでスピーカーから音声として出力します。
上の画面は1kHzでAM変調された波形です。
Lchスピーカーに耳を近づけると不快な15kHzが聞こえていると思います。
受信回路
AMの受信回路はさらにシンプルです。
この受信回路、昔懐かしいゲルマラジオそのものです。
絶対値回路「Abs」はダイオード、LPFはコンデンサで、
足りないのは同調回路だけですが、今回は周波数選択の必要がないので同調回路は省略しています。
上の波形はマイクから入力されたLch(上段)と絶対値回路の出力波形(下段)です。
絶対値回路なのでマイナス側の波形が折り返してプラス側にかさなっています。
これをフィルタして1kHzサイン波に戻します。
上の波形は絶対値回路の出力波形(上段)とフィルタの出力波形(下段)です。
これをRchからスピーカーに出力すると1kHzの変調前の信号が聞こえてきます。
これでスピーカー→マイクを介したAM変復調が完結したわけです。
フェージングの実験
フェージングとは電波の反射などで複数の経路の干渉によって強めあったり弱めあったりする現象です。
1MHzの中波の場合その波長は300mにもなるため、地形や電離層などの影響で起こる現象です。
しかし今回RWSでは音声信号で実験しているので、その波長はわずか2cm程度。
マイクとスピーカーの間で手をかざすだけでフェージングと同じ現象を再現できます。
上の波形は絶対値回路の出力波形(上段)とフィルタの出力波形(下段)です。
手をかざす位置を色々と変えて歪みが大きくなるポイントにしています。
上の波形はフェージングによって搬送波は残っているけど、変調が消えた例。
上の波形はフェージングによって搬送波自体が殆ど消えてしまった例。
このようにフェージングによって波形が歪んだり、無くなってしまったり、逆に強くなる事もあります。
こうやって実験してみるとAM変調はフェージングによって音質に多大な影響が出る事が実感できます。
さて、外乱の影響に強いと言われるFMではどうなのか?
次回はFMでも実験してみます。
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