mmCon2 取扱説明
mmCon2はRF帯域24GHz~44GHz、IF帯域1GHz~6GHz対応の超広帯域アップ・ダウンコンバータです。
USRPなど広帯域SDR機器のGHz帯IF信号をミリ波5G等で使用する28GHz帯、39GHz帯に変換できます。
mmCon2は単体でも簡単なミリ波伝送の試験が可能です。
以下の機器があれば最低限のミリ波による動作確認ができます。
□ mmCon2 本体(下の写真)
□ DC6V 2A電源(付属のACアダプター等)
□ USB-B to USB-A ケーブル
□ ミリ波用同軸ケーブル(2.92mm Molex 89762-1542等)SMAはお勧めしません。
□ Tera Term等のターミナルソフトが入ったPC
ターミナルの設定
mmCon2の電源をONしなくてもUSBをつなぐとPCが認識します。
COM番号はそれぞれの環境で確認してください。
スピードは必ず 115200 bps に設定します。
mmCon2 の起動
mmCon2 の Power をONすると以下のオープニング・メッセージが表示されます。
ID番号(シリアル)や現在の設定値が表示されます。
各種設定は内蔵Flashに保存でき、電源ON時に反映されます。
HELP の表示
helpと入力しリターンを押すと「HELP」が表示されます。
NやXは任意の数値を表しています。
キーを打ち間違えた場合は[ESC]キーで再入力できます。
ループバックテストを行う
簡易的な動作確認としてループバック試験を実施します。
接続は以下の様に2.92mm規格のケーブルをTX-RX間につなぐだけです。
ターミナルで「test」を実行すると以下の様にFFT結果が表示されます。
ループバックのための各種設定(経路切換、ゲイン、シンセサイザ)を自動で行い、内部ベースバンド信号源から10kHzのCW変調波を生成しています。
中心はベースバンドの 0Hz です。
ウィンドウサイズは横270文字以上に設定してください。
周波数変更
周波数変更はMHz以上とMHz以下を別々のコマンドで設定します。
以下はTX、RX周波数を28500MHzに設定している例です。
TXとRXは必ず同じ周波数になります。
下に表示されるのはPLLシンセサイザの各種設定パラメータです。
mmCon2内部でシンセサイザ周波数を4逓倍するため、
PLL = 28500MHz /4 = 7125MHz となります。
MHz以下を設定する場合は以下のコマンドを使用します。
これで設定周波数は 28500.250000 MHzとなります。
ゲイン設定
ゲイン設定は個体差と周波数特性によるバラツキが大きいため、周波数アップ・ダウンコンバータICのVctrl電圧を設定します。
設定範囲は 0~1600 mV でTXは値が大きくなるほどゲインは大きくなり、RXは逆で0Vが最大ゲインになります。
これはTXゲイン調整の例です。
RXゲイン調整は「garx」を使用します。
Vctrl vs Gain Table(参考値)
Vcntl | TX Gain | RX Gain |
0 mV |
-11 dB |
17 dB |
200 mV |
-10 dB |
17 dB |
400 mV |
-9 dB |
15 dB |
600 mV |
-6 dB |
12 dB |
800 mV |
-1 dB |
7 dB |
1000 mV |
6 dB |
3 dB |
1200 mV |
12 dB |
1 dB |
1400 mV |
19 dB |
-1 dB |
1600 mV |
22 dB
|
-1 dB |
(at 28GHz Tj=85degC)
このゲインはI/Q入力に複素信号を入力した想定です。
I/Q片側のみ入力した場合は理論上これより3dB利得が低下します。
BB/IF 経路切替
BB(ベースバンド)はmmCon2内蔵A/DとD/Aを使用した狭帯域テスト信号のみで使用します。
IFは背面パネルのIF-I/IF-Qに1G~6GHzの広帯域IF信号を入出力します。
以下はTXでIF/BB経路を切り替える例です。
RXについては「rxif」コマンドを使って同様に設定します。
コマンド表
上記で説明した以外のコマンドも含めてまとめています。
Command | Parameter | Function |
help |
|
このコマンド表と同等のリストを表示 |
fmhz |
24000~44000 |
MHz 以上の周波数を設定する(単位:MHz) |
frhz |
000000~999999 |
MHz 以下の周波数を設定する(単位:Hz) |
reff |
10000~122880 |
シンセサイザのリファレンス周波数を設定(単位:kHz)TCXO=122.88MHz |
sinf |
1~99 |
内蔵A/Dから生成するサイン波の周波数を設定(単位:kHz)デフォルト 10kHz |
sina |
1~2047 |
内蔵A/Dから生成するサイン波の振幅を設定(振幅値:12bit)デフォルト 200 |
gatx |
0~1600 |
TXのゲイン設定をVctrlで設定(単位:mV)1600mVで最大ゲイン |
garx |
0~1600 |
RXのゲイン設定をVctrlで設定(単位:mV)0mVで最大ゲイン |
txif |
0/1 |
TXの経路切換 0:BB 1:IF |
rxif |
0/1 |
RXの経路切換 0:BB 1:IF |
refe |
0/1 |
シンセサイザのリファレンス切換 0:内蔵TCXO 1:外部入力 |
wave |
0/1 |
RXの波形モニタ入力切換 0:Ich 1:Qch |
fftr |
0~3 |
RX入力のFFTモニタ(狭帯域のみ) SPAN 0-1:200kHz 2:400kHz 3:800kHz |
fftt |
0~3 |
TX信号源のFFTモニタ(狭帯域のみ) SPAN 0-1:200kHz 2:400kHz 3:800kHz |
test |
0~3 |
TX-RXループバックテストのFFTモニタ SPAN 0-1:200kHz 2:400kHz 3:800kHz |
rest |
0/1 |
アップ・ダウンコンバータICのハードリセット 0:Cancel 1:Reset |
diag |
1~20000 |
24GHz~44GHz全帯域のループバック試験(単位:MHz step)検査用 |
para |
|
現在のパラメータを表示する |
save |
|
現在のパラメータをFlashに保存する |
load |
|
Flashに保存されたパラメータを反映する(電源ON時に自動実行) |
I/Qフィードスルーと直交位相の調整
mmCon2はアナログI/Q変復調器です。超広帯域という特徴が得られる反面、アナログ特有のDCオフセットや位相誤差などの影響があります。
IFからI/Q信号を入力する場合、DCオフセットの調整やI/Q位相差の調整をすることで変調誤差を抑えることができます。
この図は設定周波数27GHzでIFにI/Q信号で1GHzを入力した例です。目的の信号は28GHzです。
DCオフセットを最適に調整すると図の中央のローカルフィードスルー(27GHz)を低減できます。
I/Q位相差を調整することで、図左にあるイメージ・スプリアス(26GHz)を低減できます。
I/Q振幅差を最適に調整するとイメージが抑えられますが、mmCon2ではなく信号源側(外部)で調整します。
Key | Parameter | Function |
Q |
0~127 |
DC offset Ich Up |
A |
0~127 |
DC offset Ich Down |
W |
0~127 |
DC offset Qch Up |
S |
0~127 |
DC offset Qch Down |
E |
0~127 |
TX I/Q Phase Up |
D |
0~127 |
TX I/Q Phase Down |
R |
0~127 |
RX I/Q Phase Up |
F |
0~127 |
RX I/Q Phase Down |
キーボードの「大文字」で上記調整が可能です。
mmCon2の仕様
項目 | 代表値 | 条件 |
TX周波数範囲 | 24.0GHz〜44.0GHz | |
TX出力範囲 | 10dBm〜-29dBm | 信号の条件:CW |
TXゲイン範囲 | 20dB〜-19dB | I/Q動作時 |
RX周波数範囲 | 24.0GHz〜44.0GHz | |
RX入力範囲 | -10dBm以下 | 信号の条件:CW |
RXゲイン範囲 | 12dB〜-9dB | I/Q動作時 |
RX NF | 10dB以下 | |
ベースバンド周波数範囲 | DC〜100kHz | 内蔵D/A(外部アクセス不可) |
ベースバンドレベル範囲 | 0dBm以下 | 内蔵D/A(外部アクセス不可) |
IF周波数範囲 | 1GHz〜6GHz | 背面SMA端子 |
IFレベル範囲 | 0dBm以下 | 背面SMA端子 |
電源 | DC6V <2A | 通常動作時 1.5A |
ボードサイズ | 128 x 93 mm H=1.6 | 基材:Rogerts 4350B |
ケースサイズ | 140 x 129 x 40 mm | フランジ含む |
2024/2/18現在、仕様は予告なく変更する事があります。
mmCon1からの主な変更点
□ 周波数範囲の拡大(27GHz~43GHz → 24GHz~44GHz)
□ シンセサイザICの変更(ADF4372)に伴うC/Nの大幅改善(詳細データは後日アップ予定)
□ 制御をWindowsアプリからターミナルに変更(FTDIドライバに起因するトラブル回避)
□ 外部機器との接続をIF(1GHz~6GHz)のみに変更
□ 放熱ケース採用とファンレス化、ケースの大型化
□ USBマイクロをUSB-Bに変更(コネクタ破壊対策)